すみっこに集う優しさ 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』感想
※ストーリーネタバレはしていませんが、完全に予備知識無しで観たい方はご注意ください
『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』
http://sumikkogurashi-movie.com/
観てきました。地元映画館レイトこそ無かったものの夜までびっちり上映していてちょっとビックリ。
泣ける、逆詐欺映画との前評判でしたが・・・いやもうね・・・
なにぶんイラストやグッズは見たことはあったものの、どういう設定のキャラクターなのか全く知識が無かったもので
すみっこ好きのすみっコ達がそれぞれ抱えている事情や悩み、夢などが愛らしくて切なくて
冒頭のキャラクター紹介で既にうるうると来てしまっていました。
柔らかく温かく、でも要所要所躍動感のある絵
大袈裟ではないのに引き込まれる演出
こうなるのかな~と思い浮かべる筋書きをどんどん裏切っていくストーリー
2時間にも満たない上映時間でしたが想像以上に充実感のある作品でした。
未見の方もいらっしゃると思うので詳しいネタバレは避けますが
登場キャラクター達は半端ものだったり、自分に自信がなかったり、偽りの自分を演じていたり、何かしらネガティブな要素を抱えていて
それでもそのままお互いを認め合ってるというか、受け入れ合って過ごしているんです。
相手を変えようとか否定しようとしない、すみっこが好きなもの同士争ったりもせずただ優しくお互いの側にいる。
現実世界ではなかなか難しいことですよね。
(鑑賞後にSan-XさんのHPを拝見したところ中にはポジティブなキャラクターもいるんですが、彼ら(?)とも皆そのまま仲良しで穏やかな関係を築いているようで、そこも何だかいいなあと思います)
そして映画の中では、努力や気持ちではどうにもならないことがある、という現実にも通じる厳しい世界のルールも描かれます。
絵柄が可愛らしい分、意外性も伴って絶望感がきついです。
しかしすみっコ達はその現実を受け入れはしても絶望はしないのです。
受け入れて決断して、自分にできることをやろうとする彼らは互いを否定したり見捨てたりしない優しさと強さを持ったコ達なんです。
現実世界では隅っこにばかりいることは周囲からネガティブに捉えられてしまうことも多いでしょう。
でもすみっコ達が部屋のすみっこでくっつきあっている姿を見ると
隅っこというのは壁や柱や隣にいる仲間達と常にふれ合いながら全体を見渡せる、とても優しさにあふれた場所なのではないかとも思えます。
中心に立つ強さ、先へ先へと動いていく強さも素晴らしいものですが、すみっこでのんびりとありのままを受け入れてくれる優しさもとても大事なもののように感じました。
ナレーションのお二人も素敵でした。
すみっコ達に時に突っ込んだり時にその心の内を代弁したりしながら、ずっと温かく側にいてくれる井ノ原さんの声
優しく可愛らしいのにある意味容赦ない(笑)本上さんの声
映画の世界観に見事にマッチしたキャストだったのではないかと思います。
ちょっと疲れて休みたいときも、ちょっと前向きに頑張りたいときも
すみっこでたたずんでいるすみっコ達に会いに行きたくなる映画でした。良い作品が観られて良かったです。
今後すみっコ達を街で見かけたらついついお家にお連れしちゃうかもしれないなあ(笑)