日本アカデミー賞について思う

前々から書いておきたいと思っていたことがようやく何とか形にできたので、記しておこうと思う。

(文体が過去記事と違うのはご容赦を)

 

日本アカデミー賞授賞式まで1ヶ月を切った。
この賞のテレビ放送をここまで心待ちにする日が来るとは思わなかった。

 

 

多分子供の頃にもテレビで授賞式を見ていたけれど、あまり面白いとは思っていなかった。
アメリカのアカデミー賞を毎年見ているが、主な目的は歌曲賞のパフォーマンスや途中流される映像。
誰が受賞するかを見るというよりひとつのショーとして楽しんでいる。

日本アカデミー賞アメリカのそれに比べるとかなり内輪向け。よく言えばアットホーム。
内輪向けの最たるところが、プレゼンターだ。
日本アカデミー賞最優秀賞のプレゼンターは、作品賞以外は前年の同部門受賞者。
俳優監督だけでなく、脚本、音楽、美術、録音、撮影、編集などいわゆる”裏方さん”、技術部門の方々も
皆前年受賞者がステージに立ち発表をするのだ。

あの場には、画面に華を添えるために呼ばれた有名人はいない。
賞の純粋な参加者のみがあの円卓に座っている(後方には一般の参加者もいるけれど)

日本アカデミー賞とは一体何なんだろう。
日本でおそらく一番有名で華やかな授賞式。けれどものすごく内輪向け。
この私の疑問にひとつの答えを示してくださったのは、第40回で会長功労賞を受賞された八千草薫さん。
八千草さんは授賞式のスピーチで日本アカデミー賞を指してこうおっしゃったのだ。

「お祭り」と。

お祭り。実に言い得て妙だと感じた。
お祭りには賑やかで華やかなものも多い。しかしその発祥の多くは地元の小さなコミュニティからだ。
華やかで内輪向け。日本アカデミー賞はまさに映画関係者のお祭りなのだろうと納得できた。

 

このお祭りには生粋の映画関係者だけでなく、芸人さんやミュージシャンらも時に参加してきた
しかし、ジャニーズ事務所所属のタレントさん達は長らく参加することが無かった。

 私が岡田准一さんのファンとして日本アカデミー賞を意識したのは、新人賞というものを知ったときだった。
ある年ダンスアイドルグループのメンバーが新人賞受賞者としてステージに立っているのを見たとき
「岡田さんもいつか映画に出たらこういう場に立つのかも」と夢想した。
しかし残念ながらその夢想は実現しなかった。

 

ジャニーズ事務所日本アカデミー賞の関係として初めて大きく取り上げられたのは木村拓哉さんの優秀賞辞退だっただろう。
その判断の是非をここで語る気は無い。
ただ、所属事務所に関係なく、素晴らしい演技をされた方を映画界のお祭りに誘おうとした方々が当時いらっしゃって
木村さんがもしそのお祭りに参加されていたら、きっと全力で楽しまれたんだろうなあと私は考えている。
(その後受賞した後輩達に敬意を持って接せられる方が、下世話なメディアもどきが言うような小さい人であるわけがないと思うのだ)
そしてこれから先、きっとまたお祭りへのお誘いはあるはずだとも思っている。

岡田さんが受賞したとき、スピーチで「映画人として認めていただいた」と語られた。
過去映画出演されたときのことを「お客さん」扱いと表現されていた岡田さん。
お祭りの一員になれたことが本当に嬉しそうで一ファンとして見ていただけの私もとても嬉しかった。

岡田さん受賞の翌年最優秀賞を受賞された二宮和也さんは、授賞式の岡田さんの姿を見て「欲しいと思った」と語られた。
同事務所所属タレントが連続受賞するとなると、その実力に関係なく叩かれるのは必至。
二宮さんだってそれは分かっておられたと思う。それでも彼はちゃんと自分の思いを話された。とてつもなく勇気のある言葉だ。
彼の勇気と実力は、映画界のお祭りに呼ばれるにふさわしいものだったはずだ。

第39回では山田涼介さんが新人俳優賞を受賞された。
これもジャニーズ事務所では初の快挙だ。
新人賞に最優秀などの区別はないが、今後もお祭りに参加するだろう方達へのエールのような賞だと思う。
山田さんは今年キネマ旬報ベスト・テンで新人男優賞を受賞されている。
映画界からのエールにこれからも応えていかれることだろう。

岡田さんは2年連続で優秀主演男優賞に選ばれた。
プレゼンターでの参加も含め、毎年授賞式に岡田さんのお姿を見ることができていることも、とても幸せなことだ。
そこに実力以外の力があると語る人もいる。もっと他にふさわしい人がいるという人もいる。
同じ事務所所属のタレントさんファンの方の中にも、何故自分の応援する人が選ばれなかったのかと嘆く人もいる。

傲慢を承知で言わせてもらえば、そのような意見が渦巻く中に岡田さんの姿が見られることこそ、幸せなことだ。
選ばれる余地がなければ、嘆くことさえできない。
選ばれるだろうかどうだろうかとワクワクソワソワできる今のこの状況は、苦しくもあるがとても贅沢なことなのだ。

岡田さんがお祭りに呼ばれず、他の方がお祭りに呼ばれるという日もいつかきっと来るだろう。
それは岡田さんファンの私にとってはとても残念なことではあるが
残念だ、と思えることさえきっと幸福だ。

岡田さんが受賞されたからそんな風にお綺麗に思えるんでしょうと言われるかもしれない。

その通り。

私の大好きな人を笑顔にしてくれる場所に、わざわざ文句をつけなければならない理由が無い。

綺麗事上等。

 

日本アカデミー賞は日本映画界の華やかなお祭り。
願わくばこれからも映画に携わる多くの人にお誘いがかかるお祭りでありますように。
そこに岡田さんの笑顔が見られたなら、これ以上嬉しいことはない。